コールセンターはストレスの多い職種です。その中でもクレーム対応と同じくらい皆さんが苦手なのは「高齢の方との会話」ではないでしょうか?
- 言葉が聞き取りにくい
- 話が噛み合わない
- 話を理解してもらえない
ことでイライラすることも多いでしょう。
この記事では、高齢の方の身体的・精神的特徴を交えながら、
「どのようにしたらお話がスムーズに進みストレスにならないか」
について解説しています。
高齢者対応が上手にできるようになると自ずとクレーム対応もうまくいきます。是非、最後までお読みいただき職場のストレスを減らしてくださいね。
- コールセンター15年
- スタッフ・SV・マネージャー全て経験
- SV育成・研修担当
「超高齢社会」の現状と未来
コールセンターにおいて高齢者対応は年々増加しています。
なぜなら、お年寄りの平均寿命が伸びると同時に「子供を産まない人」が増え、総人口に対する高齢者の割合が増えたから。
「超高齢社会」が来るよと言われて久しい日本。最近はどこを歩いていても、どんなお店に入っても比較的高齢の方が多いと思いませんか?
1950年は4.9%だった割合が、1985年は10%、2005年には20%を超え、2021年は29.1%。2040年には35.3%になると見込まれています。
つまり、今の若い人たちが今後どんな仕事をするにしても、「お年寄りとの関わりは避けて通れない」のです。
- 65歳以上の人口が7%を超える:高齢化社会
- 65歳以上の人口が14%を超える:高齢社会
- 65歳以上の人口が21%を超える:超高齢社会
高齢の方の特徴
一口に高齢者といっても状況はさまざま。60代で介護が必要な方もいれば80才でも若々しく元気な方もいらっしゃるので一概には言えませんが、60才を過ぎる頃から加齢による変化が顕著になってきます。
まずは高齢の方の特徴を知り、自分の常識は通用しないことを肝に銘じてください。
身体的変化
◆目の老化:近くのものが見えにくくなる、水晶体が黄ばんでくるので物が暗く見える、小さい文字が見えない
「資料見ればわかるじゃん」なんて思わないこと。実際よく見えていません
◆耳の変化:高音が聞き取りにくくなる、早口が聞き取れない、雑音はよく聞こえる
実は聞こえていないのに「わかりました」という人も多い。「えっ?」と言われてもムカッとしないこと
◆脳の変化:記憶力の低下、新しいことを覚えにくい、言葉がすぐに出てこない
言葉が出て来ないので「あれ」「それ」「そっち」などのワードが増える。何を言いたいのか察してあげましょう
精神的変化
退職、家族の死、病気などがきっかけで気力が低下し落ち込みことが多いのも高齢者の特徴です。
その上、老後の心配や体調不良なども重なって、ボソボソとしゃべる、反応が少ない、笑わないなどの症状が現れることがあります。
また情緒が安定せずイライラしたり、「馬鹿にされている」「年寄り扱いされた」など被害妄想的な感情を抱く場合も少なくありません。
いずれにしても、これらの症状は人間として避けて通れない道。その方の性格にもよりますが、認知症などの病気を除けば「加齢による自然現象」と理解しなければなりません。
コールセンターにおける高齢者対応
以上の高齢者の特徴を踏まえ、コールセンターではどのような事に気をつけて対応するべきでしょうか。
コールセンターという性質上、相手を満足させるのも怒らせてしまうのも「声」。耳の力が衰えている高齢の方には特に意識しなければなりません。
ゆっくり話す
高齢の方は自分の早口は気にならないのに、相手が早口だと非常に嫌がります。
「ゆっくりすぎるかな?」と思うくらいのスピードで滑舌良く話してあげましょう。
自分の話すスピードに相手がついて来られると思ったら大間違いですよ。
なるべく低いソフトな声で話す
相手が聞こえなさそうだからといって、大きな声を張り上げて応対している女性スタッフがいますが逆効果。内容は伝わらず「うるさい」ことだけが伝わるという残念な結果に終わります。
なぜなら、高齢の方が一番苦手なのは「高くてキンキンする声」だから。
とはいえ、もともと声の高い女性に「声を低くして!」というのも気の毒ですから、低音でソフトな話し方をするスタッフに交代してもらうのも一つの方法です。
話をかぶせない
「話をかぶせない」と言うのはコールセンターの鉄則でもあり高齢者対応に限ったことではありませんが、少々意味合いが違います。
クレームの引き金になるからというより、単純に「声が聞こえないから」です。
高齢の方とお話するときは、話がかぶらないように思い切って「間」をあけましょう。
間をあけることで、すぐに言葉が出てこない高齢の方に対し「返事を待ってあげる」という配慮にもなりますからね。
その「間」が我慢できずについ喋りつづけてしまう・・・ってことないですか?
シンプルに話す(一文を短くする)
高齢者対応において「シンプルに話す」ことは不可欠です。
先程も説明しましたが、年齢を重ねると記憶力の低下、新しいことを覚えにくい、言葉がすぐに出てこないということが良くあります。残念ですが、長い文章を一度で理解することは難しいのです。
例:
「また何かお困りなことがございましたら、お気軽にお電話いただければすぐに対応いたします」
普通の会話であればパーフェクトですが、耳の遠いお客様にとっては42文字の「音」にすぎません。どの言葉が大事でどの部分が要らない情報なのかがわからないのです。その場合、
「また、お電話くださいね…」
とゆ~っくり言うだけのほうがよっぽど効果的。
簡単な言葉で言い換える
コールセンターは接客業です。相手がわかりやすい言葉を使い「噛み砕いて話す」のが基本です。
高齢の方が「えっ?」と聞き返してきたら同じ言葉を繰り返すのではなく、なるべく簡単な言葉に置き換えて話してあげるのがコツ。
例:
「代金は商品と一緒に同封されている振込用紙を利用して、最寄りの金融機関で期限までにお支払いください」
↓
「お金は、〇〇が届いたら箱の中に振込用紙が入ってるので、それを郵便局かセブンイレブンに持っていけば払えますよ。」
特にカタカナや英語が苦手。できるだけ日本語で説明してあげましょう。
例:
この商品はオールインワンゲルなので、朝晩のスキンケアはこれ一本でOKです。
↓
お肌のお手入れは朝起きた時と夜寝る前に〇〇をつけるだけで終わり。化粧水や乳液をつけなくてもいいんですよ。
ワード | 言い換え例 |
---|---|
ダイレクトメール | お手紙 |
ご返送ください | こちらに送り返してください |
メーカー | 修理をしてくれる会社 |
インターネット | パソコン |
生年月日 | お誕生日 |
定休日 | お休みの日 |
コールセンターに連絡してください | この番号に電話をください |
いったん保留します | 電話を切らずにこのままお待ち下さい |
発送は◯日頃です | ◯日頃、倉庫を出る予定です |
切り際を逃さない
高齢の方とのお話で一番頭を悩ませるのが「話が終わらない」こと。私も何回も困ったことがありました。
結論から言ってしまうと「30分くらいで終われば御の字」とあきらめましょう。それ以上になると対応しているスタッフも疲れが声に表れてくるので、お互いのために良いとは言えません。
チャンスは会話が途切れたとき。(実際はなかなか途切れないのですが・・・)
- 「それでは商品が到着したら、またお電話ください」
- 「今日はありがとうございました」
- 「今日はこれで失礼させていただきます」
などと、タイミング良く畳み掛けてみましょう。
それでも終わらなければ「少々お待ち下さい」と言ってわざと保留してみるのも一つの方法です。私が現役の頃はリアルモニタリングをして「今だー!」と切断するタイミングを指示したことも数知れず。
そんなことして相手を怒らせない?と不安になるかもしれませんが、高齢者の特徴として「記憶力の低下」があります。
幸か不幸か、年齢が高くなればなるほど忘れっぽくなる。クレーム対応をしていても、次の日になると「何を怒ってたんだっけ?」ということもしばしば。
受話器を置いたあとは、みなさん意外とケロッとしてるはずですよ。
決して相手を見下さない
高齢者の特徴を頭では理解しているつもりでも、「何度言ってもわからない」「耳が遠い」「人の話を聞いてない」相手に対して冷たい態度をとったり、年寄り扱いしてしまうこともあるでしょう。
人間だから仕方がないとは言え相手はその「冷たさ」を察知します。なぜなら視力は衰えても「人を見る(心の)目」やプライドは失っていないから。
「年配の方を尊敬しなさい」などと綺麗ごとを言うつもりはありませんが、少なくとも高齢の方を見下すような感情を持っていると声に現れるので要注意です。
最後に/まとめ
今回は、「コールセンターにおける高齢者対応」が重要な理由と題して、高齢の方の特徴とコールセンターにおける高齢者対応についての注意点を解説しました。
冒頭でご紹介したとおり、高齢の方との関わりは益々増えていくでしょう。今コールセンターで働く皆さんが別の職種に転職したとしても高齢者対応はついて回ります。
コールセンターにいる間に年配の方とのやり取りに慣れておくことは決して無駄にはなりません。
- 高齢者と言われる方々も好きで衰えているわけではない
- 電話の向こうで無理難題言っている人は30年後の自分
このことを頭において応対してみてください。優しい気持ちが伝わると相手も穏やかになるはずですよ。